いらん床屋談義

昨日、土曜日はどたばたしていたのが夕刻前に急に暇になって、しばらく機会を逃し続けていた床屋に駆け込んだ。最近引っ越してシティの東のふちに住むので何事も徒歩で便利だ。

大半の床屋は律儀に5時で閉めるせいで、二軒で今日はもう無理。市内循環の無料バス、赤キャットに乗って市街の中心のちょっと手前で降りて回転寿司の並びの新しい床屋へ。

一通りの会話のあと、出身を聞かれて日本と応え、床屋はイランと言い、むかしはイラン人がけっこう日本へ稼ぎに行ったもんだというので、あんたそんな歳じゃないだろ、いっぱい来てたのは90年代初頭からしばらくだよというと、そうだな、俺らの歳じゃ韓国だ。日本へは韓国へいったん入ってコンテナに隠れたりと大変で、着いたらヤクザに〆られてと大変だったと聞いたという。

失礼だがあんたはそんなやんちゃする輩じゃないだろと問うと、日本や韓国まで行ったのはテヘランのチンピラがメインで俺は南部のイラン第二の都市の出身だと言い、田舎の連中は宗教的で外国にいったりはしないという。

宗教的か否かにかかわらず外国へ行くのは街の子たちさと流しつつ、此処は床屋。唯一、政治と宗教の話をしてもいい場所、いろいろと聞いてみた。

曰く イランは世界で五指に入る本質的に豊かな国。石油にゴールドなんでも掘れば出てくるし実際掘っている。ただその金はみんな近隣諸国へやっちまううんだと。

ーーそりゃ近隣諸国には米軍だのその肝煎りの聖戦戦士だのがイランをねらってるって聞くからなと思いつつ、先を即す

曰く 金銭汚職がひどい。汚職はシャー パーレビの御世とかわってない。

曰く 世界一もつ価値のないパスポート。行けるのはイラクだけ

曰く 政教一致なんてぜったい無理。

曰く 政府、役場がでかすぎる。出世した連中の考えることは賄賂を貯め込んでカナダかアメリカにとぶことばかり

曰く ホメイニ一家の資産は50億ドル(ホントか聞き違えか?)

何年かまえにテレビで見たイラン映画思い出した。主役は2人の女性。赤く染めた髪に申し訳程度にスカーフを巻き、夫とは別居中の大学の教員と、迷路のようなバザールの奥に住み、妊娠中も働くしかない黒ずくめの女。

赤髪スカーフの別居中の夫の寝たきりの父親の介護の職を得た黒ずくめ、なんらかの事故があって流産してしまう。ここぞとばかりに荒ぶる無職の黒ずくめの夫と自分の夫の両方が憎く、旧来の女性像にとらわれる黒ずくめを啓蒙しようと示談で黒ずくめに肩入れする赤髪スカーフ。頼むからほっといとくれと懇願する黒ずくめ。

拗れた示談はコーランに手を当てて宣誓しての真実タイムへ進展し、結局は赤髪スカーフの薮蛇で黒ずくめが嘘を告白する羽目に陥って、助けるつもりが黒ずくめが大変なことに。

なんてお話でした